the bucket

Google は下り転送料金を「廃止」しなかった

Google は下り転送料金を「廃止」しなかった

Drew Schlussel
By Drew Schlussel
Senior Director, Technical Product Marketing

April 3, 2024

※このブログは2024年1月16日に原文が公開され、その後AWSの発表を受け、3月7日に追加修正を行なった英文ブログを翻訳したものになります。


先週、Googleが下り転送料金を「廃止」したという「ニュース」がネット上を駆け巡り、私のSlackにも通知が届きました。世界で4番目のクラウド・ストレージ・サービス・プロバイダーとして、またハイパースケーラーの競合他社が課す過剰なAPI利用料と下り転送料金について常に注意喚起しているプロバイダーとして、これは大きなニュースでした。

「Google Cloudが下り転送料金を廃止」、「Google Cloudがグローバル顧客のデータ下り転送料金を廃止」、「GoogleがGoogle Cloudから外部にデータを出す際に手数料を課すのをやめると発表」といった見出しを見て、興味津々なものから懐疑的なものまで、様々な反応がSlack上で飛び交いました。私は何かの間違いじゃないかと思っており、実際それは正しかったわけですが、これらの見出しはどれも正確ではなかったことが判明しました。

情報源を確認

結局、Googleは下り転送料金を廃止していません。この料金変更に関するブログ投稿を読むと、Googleは乗り換えを行う顧客に対して、他のクラウドプロバイダーやオンプレミス・データセンターにデータを移行する際にGCPクレジットを申請する機会を提供していることがわかります。乗り換えを行う顧客が下り転送料金分のクレジットを受け取るためには、その申請が審査され、承認されなければなりません。退去が承認されると、カウントダウンが始まります。顧客は60日以内にデータ転送を完了しなければならず、この日を過ぎた場合には再度申請しなければなりません。通常のデータ移行や下り転送の料金はそのままであり、実際、2024年2月1日から下り転送料金の値上げが実施されています。

彼らが実際に行ったのは、EUと英国の規制当局に白旗を振り、反競争的なビジネス慣行(注:こちらの英文記事を参照)に関する懸念に対処することであって、おそらく主にAWS/Azure全般に対するさらなる規制措置を回避することでした。規制当局は、ハイパースケーラーが顧客のビジネスを囲い込むために使用する「壁に囲まれた庭」について声高に主張してきました。ロックインの一形態とみなされる下り転送料金は、クラウドのモビリティと、より公平で競争的な市場を妨げる重大な問題なのです。

この発表でGoogleは、かなり迷惑なものではありますが、離脱する顧客の実情を把握するためのお問い合わせフォームも作成しています。彼らは、全ての基本的なアカウント情報のみならず、BigQuery、BigTable、SQL、Storageなどで使用されているギガバイト数の入力も求めているのです。彼らはGoogleなのだから、すでにその情報を持っているのではないでしょうか?彼らはこのデータをもとに、問題に取り組み、顧客を維持するために最善を尽くすでしょう。ほとんどの顧客は、すでにGCPから離れる決心をしているのに、データ移行料金の免除申請手続きが必要なことに気分を害されるのではないでしょうか?これは、一部の顧客にとっては傷口に塩を塗り込むようなものだと捉えられるかもしれません。

追加情報: Googleによる下り転送料に関する見解の発表に続き、AWSも顧客がAWSプラットフォームから退出する際にデータ転送料金を減額または無料とするプログラムを開始すると発表しました。ハイパースケーラー各社に関して言えば、利用を止める方に限り、下り転送料を回避するということになります。
AWSはまた、アカウント移行がデータ転送補助金プログラムに準拠しているか確認するため、アカウント移行を審査すると述べています。もし期待通りに移行が行われなかったと判断された場合、AWSはユーザーに下り転送料金を遡って請求する権利を持ちます。

今回の変更の主な目的は、欧州データ法のような新しい規制に関連する潜在的な訴訟にあらかじめ対処することにあります。AWSは下り転送料金を廃止したわけではなく、このようなネットワーク料金に関連したビジネス・プラクティスは、全ての主要なハイパースケーラーにおいて継続されると予想されます。

今回の発表からの学びは以下の通り:

1. 見出しを鵜呑みにしないこと

ブログがプレスリリースに取って代わり、AIが自動的に記事を作成するこの時代、事実確認はこれまで以上に重要です。誤解を招くような見出しの記事が、正確な見出しの記事と同じくらい多くありました。控えめに言っても非常に残念です。

2. 自社のクラウドコストを把握すること

ハイパースケーラーとビジネスをするのは、車やトラックを買うようなものです。GBやTBあたりのコストは出発点に過ぎません。その後、転送料金、運用/API料金、階層化料金などが上乗せされます。すぐに “宣伝で聞いていた価格 “の2倍、3倍となり、新車のカムリはレクサスよりも高くつくことになります。


3. 予測可能な価格が理想的なソリューション

「ビッグ4」と呼ばれるクラウドストレージサービスプロバイダーの中で、追加料金なしで予測可能な価格設定を提供しているのはWasabiだけです。従量課金制(Pay-as-you-Go)であれ容量予約制(RCS)であれ、APIコール、データ転送、下り転送に追加料金はかかりません。あなたのデータなのですから、好きな時に好きな場所でご自由にお使いいただけます。


今度また信じられないような下り転送料金廃止の見出しを目にしたら、必ずその情報源を探し出し、真相を明らかにしてください。料金はなくなるのではなく、増えるだけなのです。事実を知ることで、より正確な情報を得ることができ、より良い決断を下すことができるようになります。真実はいつもひとつ、それを見つけ出してください。

the bucket
Drew Schlussel
By Drew Schlussel
Senior Director, Technical Product Marketing