ジェネラル

クラウドストレージの落とし穴

2024 July 25By Yasuhiro Ozawa

ホラーな表現が含まれます。心臓の弱い方はご注意ください。

あるサービス事業者よりこんなお悩み相談がありました。こちらの事業者はIT運用に不安が多い地場の中小企業向けに最長10年保管のリモートバックアップ環境を提供するサービスを運用されていました。2010年代に市場で一般化した重複排除技術を利用し、大容量のデータをコンパクトに圧縮、コストダウンにも大きく寄与する素晴らしいサービスでした。災害対策や法律の変化等による長期のデータ保護に悩む多数のユーザーを獲得し、ビジネスは非常に好調だったようです。預かるデータ量も倍々で増えてきたことからオンプレとクラウドを連結する自動階層化機能を用い、ペタバイトを超えるデータ量であるにもかかわらず省スペース・大容量・低コストの運用を実現できたようです。

ある日、驚く情報が耳に入ってきました。なんとこのオンプレ型の重複排除製品を提供していたストレージベンダーが買収され、製品の継続提供が中止(EOL)されることが決定しました。

バックアップシステム環境の刷新

企業買収はIT業界では決して珍しくありませんが、このような事態が発生した際、とにかく優先して守らなければいけないものはこのインフラを利用するお客様です。なにせ多数のお客様に10年という保持期間を約束してしまっている以上、途中でサービスをギブアップするわけにもいきません。一時的なサービス停止を伴うメンテナンス期間を設けてインフラ環境を刷新することを決断されたようですが、ここで新たな課題に直面します。

なんと数年間もの期間、継続して蓄積されたクラウド側のデータには、いずれのメーカーの製品も互換性が無いことが発覚しました。重複排除技術を利用したデータストレージの場合、独自技術がふんだんに利用されているため他製品との互換性は期待できません。

データのサルベージ

EOLのタイムリミットが迫る既存環境からは早く脱出しなければなりません。メーカー保守が切れた環境で数百社のデータを預かるなんてリスクでしかありません。ランサムウェアがニュースを騒がし始めていた当時、買収されて開発エンジニアも去ったEOL製品に新たなセキュリティ対策パッチ等が提供されるなんてことは当然期待できないからです。

そのため旧環境とは全く関連性の無い、新たなバックアップサービスのインフラ環境に新たなクラウドストレージを用意し結合。そして旧環境から新環境に対してのデータサルベージを行うことで難を逃れる方向で決断されたようです。一時的に倍の容量のストレージを利用するため多くの費用が掛かりますし、クラウドベンダーが提供する専用線を使ったとしても長い長いデータ移行期間をともないますが、多少の赤字が出ようともお客様の期待を裏切るわけにはいきません。このサルベージ方式の案で決済稟議を回すべく机上で試算してみたところ、あまり気にかけたことのなかった重大なコストが存在することが発覚しました。。。

下り転送費用 API費用

既存の環境で利用しているクラウドストレージには約 5PBのデータがありました。新しい環境にデータをサルベージする際、どうしても全てのデータは一旦オンプレ環境を経由せねばなりません。このクラウドストレージの場合、下り転送料金、すなわちデータのダウンロードを行う際に、GBあたり0.084ドル(執筆時)の課金が発生することがわかりました。

5PB = 5,120TB = 5,242,880GB (※1,024進数)ものGB数になるわけですが、この数に上記料金をあてはめてみると、、、、

5,242,880GB * 0.084ドル = 440,402ドル ≒ なんと6.6千万円!(※USD = 150円)

しかもこれで終わりではありません。ダウンロードするオブジェクトの数に比例し発生するGETコマンド利用に対するAPI費用もかかってきます。重複排除技術は1つのファイルを数KB単位など小さなチャンクに分割して保存するため、たった1つのバックアップデータが数千を超えるオブジェクト数にもなり得ます。という事は1つのデータを要求するために発生するAPIリクエスト数も数千回?

全てを考慮すると、下り転送料/API費用だけで最低でも1億円近いコストを請求されることに!

行くも地獄、退くも地獄、行ったら行ったで新環境のリプレイス時に同じ目に合うであろう事は明白。皆さんだったらどうしますか?

さてこの事業者はその後どうなったんでしょうね。気になりますか?

Wasabiはこのような心配のないクラウドストレージサービスです。お客様にかかる費用はストレージ容量だけ。ほかの追加費用はありませんし、安心してご利用頂けます。

似たようなお悩みを持たれている方、まずはご相談ください。この事業者が行った解決策を提案させて頂きます。

drp
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