Wasabiによる「2024年Cloud Storage Index」の主な結果

2024 August 16By Andrew Smith

Wasabiによって行われた調査「2024年Cloud Storage Index(CSI)」では、クラウドストレージ市場に関するさまざまな洞察が集まりました。本調査では、クラウドストレージのデータ増加と予算、サービスの課金と料金の課題、ユーザー満足度、ベンダーの選択、クラウドストレージにおけるAIおよび機械学習の導入に関する現状と課題など、さまざまなトピックを取り上げています。

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Wasabiによる「2024年Cloud Storage Index」の主な結果

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主な調査結果と「知っておくべき5つのポイント」に先んじて、調査プロセスおよびサンプリングの内容をご説明します。

  • WasabiがCloud Storage Indexを作成するのは今年で2年目となります。

  • 調査の実施と管理はVanson Bourneによって行われ、その結果をWasabiの戦略・市場情報チームによって分析しました。

  • 今年のオンライン調査には、1,200名の回答者が参加しました。回答者は全員、組織のパブリッククラウドストレージの購入プロセスにおける役割、経歴、関与の度合いに基づいて適性を判断されました。 

  • 回答者は、Wasabi以外にもさまざまなクラウドインフラおよびストレージサービスを使用しています。パブリッククラウドストレージを2020年以降に導入した回答者は44%、2020年以前から利用している回答者は56%という割合でした。

  • 回答者は北米、ヨーロッパ、中東及びアフリカ、アジア太平洋地域にまたがり、日本、英国、ドイツ、カナダ、インド、韓国をはじめとする国々が含まれます。

  • 回答者は、医療、金融、メディアおよびエンターテインメント教育マネージドサービスプロバイダー州政府・地方政府、連邦政府をはじめ、あらゆる分野にわたります。

調査結果1:2024年、クラウドストレージ市場は成長の兆し

Pie chart showing 93% of people believe their organizational data will increase, and 90% believe their data storage budget will increase

2023年、コンピューティング、ネットワーク、ストレージサービスなどが含まれるクラウドIaaS(Infrastructure as a Service)部門の市場成長は鈍化しました。大手企業のほとんどは年間の成長率が縮小しており、主な理由としてはコスト削減に苦戦したことが挙げられています。成長の鈍化は続いており、アナリスト企業Gartnerは、2024年のIaaS予測を1950億ドルから1820億ドルに下方修正しました。

市場を注視する方々は、この鈍化がクラウドストレージサービスに与える影響について考えるはずです。Cloud Storage Indexは、こういった疑問に役立つ貴重なデータを提供します。

  • 2024年、クラウドストレージ容量の増加を予想する回答者の割合は93%

  • 2024年、クラウドストレージ予算の増加を予想する回答者の割合は90%

ストレージ予算と容量の増加率がともに高いことは印象的ですが、2023年との比較も同様に重要です。2023年比で、データ増加率は9ポイント上昇、予算増加率は6ポイント上昇しました。これらのデータは、2024年におけるクラウドストレージのデータ増加と予算拡大を示唆しており、来年の市場指標として役に立つはずです。

調査結果2:クラウドストレージ市場における料金問題

Pie chart showing 52% of storage bills is allocated to storage capacity, and the rest to storage fees

コンピューティング、ストレージ、ネットワークの使用料が存在することを知る人は多いはずです。しかし、その影響を正確に測定するのは簡単なことではありません。この原因として、料金体系の多くが複雑で細分化されていることが挙げられます。また、組織全体にわたるサービスの正確な予算や、個々のサービスおよびアカウント/サブアカウントレベルでの料金コストの内訳を作成することがほぼ不可能な企業も存在します。

Cloud Storage Indexは、ストレージの容量および使用料の観点から平均的な課金構造の内訳を紐解き、クラウドストレージ料金の傾向について検証しました。特筆すべき事項としては、市場に手数料の問題があると2年連続で指摘した回答者が多く存在したことが挙げられます。正確には、パブリッククラウドストレージに対する課金のうち47%は、ストレージ容量ではなく手数料として支払われていることが判明しました。

残念ながら、悪いニュースはまだあります。特定のパブリッククラウド環境からデータを移動する場合、または同じパブリッククラウド内のリージョン間でデータを移動する場合の「下り転送料」は、(IaaS業界で最も認知され、話題になる料金の1つですが)、氷山の一角にすぎないことが判明しました。回答者にストレージ料金とクラウドストレージ予算に与える影響について順位付けを依頼したところ、下り転送料は、APIリクエスト料金、データ操作料金、データ取得料金、データ削除料金に次いで最下位でした。

調査結果3:クラウドストレージ市場の満足度は極めて高い

pie chart showing 90% of people are satisfied or completely satisfied with the object storage

今年のCloud Storage Indexでは、ユーザーの満足度についても質問しました。興味深いことに、回答者の90%がクラウドオブジェクトストレージソリューションに「満足している」と答えており、驚くほど高い結果となりました。SaaS企業は通常、満足度の目標を60%~80%の範囲に設定します。そのため、回答者がこの範囲を超えて非常に高い満足度を返したことは印象的です。

この満足度の高さには、現代のクラウドストレージサービスが本質的に使いやすくシンプルであること、そして現代のITインフラやアプリケーションエコシステムでシームレスに機能することが反映していると考えられます。簡単に言えば、クラウドストレージサービスを選択することにより、組織がハードウェアやディスクを管理したり、システム更新をネゴシエートしたり、ストレージシステムやネットワークトポロジーのパフォーマンスやアクセシビリティの維持について心配したりする必要がなくなるということです。クラウドサービスがストレージハードウェアのプロビジョニング、管理、可用性、レジリエンスに関連するすべてのタスクを引き受けることにより、IT担当者はより価値の高いタスクに時間と人材をシフトすることができます。私たちは、これがクラウドストレージ市場の満足度が高い主な理由の1つであると考えます。また、ユーザーの不満の理由について追加の質問も行いました。その結果、多くの組織がパブリッククラウドオブジェクトストレージサービスに満足できない最大の理由が価格であることがわかりました。

Wasabiにおける背景:顧客満足度をより深く理解するために、Wasabiのお客様107名を対象に別の調査を実施しました。その結果、92%がWasabiに「満足」していると回答しています。満足度のリッカート尺度はCloud Storage Indexと同様に揃えています。

調査結果4:人工知能(AI)と機械学習(ML)の導入によって生じたインフラとストレージの課題

2024年 Cloud Storage Indexでは、回答者の99%が組織内でAIおよびMLアプリケーションやサービスを導入する予定、またはすでに導入していると答えています。この結果は、驚くべきことではありません。2023年に生成AIアプリの人気が高まったことで、関連するテクノロジーが広く宣伝されるようになりました。AIおよびMLの導入は、刺激的かつ革新的なインフラ革命の起爆剤となります。しかし、同時に大きな課題も生じると私たちは考えており、業界アナリストも同様の警告を発しています。

今年のCloud Storage Indexでは、AIおよびMLを導入する組織が抱えるクラウドストレージ関連の懸念事項を明らかにしました。

  • AIおよびMLワークロードの導入に関連するクラウドストレージの最大の懸念事項として、より広範囲のロケーション(コアデータセンターやエッジ、リモートなど)にわたるデータ保存の必要性を挙げた回答者の割合は49%

  • AIおよびMLワークロードの導入に関連するクラウドストレージの最大の懸念事項として、(ハイブリッドまたはマルチクラウドストレージを含む)ストレージの移行・移動に関する要件の増加を挙げた回答者の割合は44%

  • AIおよびMLワークロードの導入に関連するクラウドストレージの最大の懸念事項として、データセキュリティとコンプライアンス要件への対応を挙げた回答者の割合は43%

調査結果5:クラウドサービスプロバイダーを選択する際、持続可能性が重視される傾向に

bar chart show organizations' most important considerations

昨年に引き続き、クラウドストレージサービスプロバイダーを選択する際に最も重視する点についての質問を行ったところ、トップ3は2年連続で同じ結果となりました。

  1. 特定のサードパーティアプリケーションおよびプラットフォーム(Veeamなど)との統合が重要であると答えた回答者は40%

  2. ネイティブデータ保護、セキュリティ、コンプライアンス機能(不変性レプリケーション、災害復旧など)が重要であると答えた回答者は38%

  3. 持続可能性(インフラアーキテクチャ、サービスプロバイダーのコミットメント、カーボンフットプリント計算などの内蔵ツールの観点から)が重要であると答えた回答者は38%

昨年、トップ3に持続可能性がランクインしたことは想定外の結果でした。今年も持続可能性はトップ3に留まり、概算の数字で見ると、ネイティブデータ保護と同率2位に並びました。つまり、持続可能性が2位から大きく離れて3位となった昨年と比べて、名実ともに順位が上がったということです。

この結果は、多くの企業において持続可能性とESGに関する取り組みの重要性が高まっているということを反映しています。多くの組織では、自社のITソリューションやサービスのCO2排出量を正確に測定する取り組みを開始し、今後の改善に役立つベースラインを測定しています。また、潜在的な規制要件により、カーボン排出量を正確に測定することもますます重要になっています。

アナリストレポート

Wasabiによる2024年Cloud Storage Indexレポート

2024年、インフラ関連の意思決定者とクラウドストレージユーザーを対象として行われた調査で得られた洞察と傾向をご確認いただけます。

ある市場調査では、従来のオンプレミスコンピューティングよりもクラウドインフラの方が環境に優しいことが示されています。しかし、大規模なデータセンターの建設や、大規模な電気および水の消費が必要となる懸念から、「クラウド」は持続可能性とESGにとってネガティブなイメージを与えることもしばしばあります。このような認識が一因となり、多くの組織がクラウドストレージプロバイダーとの会話で持続可能性を懸念点として挙げる傾向にあります。

これは、市場全体にとってポジティブな影響を与えると私たちは考えます。クラウドインフラサービスを導入する組織が増えるにつれ、スコープ3排出量を正確に測定し、信頼性の高い結果を提供するサービスプロバイダーの需要も高まります。このデータは、組織がESGパフォーマンス全体を評価する上で非常に重要です。Wasabiは、無料で使用できるカーボン計算ツールを提供し、お客様がカーボンフットプリントを測定・把握するサポートを今後も行ってまいります。

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