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ビジネスデータの保存に適したデジタルアーカイブとは?

2025 May 16By Mayuko Yoshitome

デジタル化が進む現代のビジネス環境において、データは最も重要な資産の一つです。企業が日々生成・収集するデータ量は爆発的に増加しており、こうした膨大なデータを安全に長期保存し、必要なときに迅速に取り出せるデジタルアーカイブの重要性が高まっています。

一方で、デジタルアーカイブに利用するストレージソリューションの選択は、企業にとって悩みの種です。この記事では、ビジネスにおけるデジタルアーカイブ向けの主要なストレージソリューションを比較しながら、最適な選択肢を選ぶヒントをお伝えしていきます。

デジタルアーカイブに求められる要件

ビジネスデータの長期保存を目的とするデジタルアーカイブには、いくつかの重要な要件があります。まずは、企業が貴重なデータ資産を安全に管理し、活用するために必要とされる、それらの要件についてまとめてみましょう。

データの永続性と安全性

ビジネスデータをアーカイブする最大の目的は、長期間にわたってデータを確実に保存することです。例えば、会計記録は法令遵守のために最低7年間、重要な知的財産や契約書類は数十年にわたって保持する必要があります。このような長期保存においてはメディアの耐久性が重要であり、物理的な劣化や障害に対する耐性が求められます。

また、単一障害点(SPOF)をなくすためのバックアップと冗長性も必要です。データの複数コピーを地理的に分散して保管することで、自然災害やハードウェア故障などのリスクを軽減できます。加えて、データ形式の陳腐化に対応するためのフォーマット変換や定期的な整合性チェックなど、長期的なデータ管理戦略も欠かせません。

アクセシビリティと検索効率

データを安全に保存するだけでなく、必要なときに迅速にアクセスできることも重要です。例えば、監査への対応や過去の案件調査、ビジネス分析などの場面では、古いデータへの素早いアクセスが求められます。特に法的な要求に応じる場合などは、検索の遅延が企業にとって大きなリスクとなることもあります。

効率的な検索機能も不可欠です。メタデータやタグ付け、全文検索などの機能により、大量のデータの中から必要な情報を素早く見つけ出せるようにする必要があります。さらに、ビジネスの成長に伴って増加するユーザー数に対応するため、複数ユーザーによる同時アクセスをサポートし、アクセス権限を適切に管理することも求められます。

現在主流のアーカイブソリューション比較

企業のデジタルアーカイブに使用されるストレージソリューションには様々な選択肢があり、ビジネスの規模やニーズに応じて最適な選択が異なります。ここでは、多くの企業に利用されている4つのアーカイブソリューションを比較します。

テープ媒体

LTOをはじめとするテープストレージは、これまで非常に多くの企業で利用されてきたアーカイブソリューションです。テープメディアは利用しないときには電力を消費せず、HDDと比較して障害率も低く、GB単価が比較的安価であることから人気があります。

一方で、データへのアクセスに時間がかかることや、メディアの世代交代が早く互換性に課題があること、シングルタスクのため複数ユーザーが同時利用できない非効率さなどが課題です。

メリット

  • 電力消費が少ない

  • GB単価が比較的安価(特に大容量データの場合)

  • 物理的に分離保管できるため、サイバー攻撃に強い

デメリット

  • データへのアクセスに時間がかかる(オフラインストレージ)

  • 世代交代が早く、古い世代のテープは読み取り困難になる(通常2世代まで保証)

  • シングルタスクのため、複数ユーザーが同時に利用できない

オプティカル媒体

Blu-rayやDVD、XDCAMなどの光学媒体は、モバイルストレージとしても活用可能な汎用性の高いメディアです。理論上は100年以上の寿命があることと、比較的長い後方互換性を持つ点がメリットとされています。

一方、時代の移り変わりに合わせて再生用の機材がEOL(End of Life)になりつつあり、将来的にはデータの読み取りができなくなるリスクが懸念されています。加えて媒体の容量が比較的小さいことから、大量データの保存には多数のディスクが必要となり、管理が煩雑になること、また検索性が低いことも大きな課題です。

メリット

  • メディアの汎用性が高い

  • 比較的長い後方互換性(特にBlu-ray)

  • 理論上は100年以上の寿命

デメリット

  • 再生機器のEOL(End of Life)により、メディアを読み取れなくなる

  • 大量データの保存には多数のディスクが必要

  • 検索性が低く、目的のデータを見つけるのに時間がかかる

小型NAS

小型NASはデータ量が数百TB程度の中小企業などを中心に、手軽なオンラインストレージとして活用されています。データが常にオンラインで複数ユーザーが同時にアクセス可能なため、データ検索が容易で業務効率が高いのが特徴です。大型NASと比較して、低コストで導入できる点もメリットです。

一方、大型NASと比較すると障害発生率が高く、リカバリー作業に時間がかかることが課題として挙げられます。またデータの増加に伴い複数台の導入が必要になるケースがあることと、保守期間の終了ごとに機器のリプレイスとデータの移行が必要となります。

メリット

  • データが常にオンラインで、迅速なアクセスが可能

  • 複数ユーザーが同時にアクセス可能

  • 大型NASよりも低コストで導入可能

デメリット

  • 大型NASと比べて障害発生率が高め

  • リカバリー作業に時間がかかる

  • 数年おきにリプレイスとデータ移行が必要

クラウドストレージ

クラウドストレージは、近年急速に普及しているアーカイブソリューションです。物理的なインフラ管理が不要で、容量を必要に応じて拡張でき、場所を問わずアクセスできる点で人気を集めています。加えて、保守やバージョンアップの心配がなく、データの共有も容易です。

一方で運用に伴うコスト予測が困難で、サービスによってはアクセスやダウンロードごとに課金されるなど、想定以上に高額になるケースがあります。また運用にはインターネット接続が必要となることから、セキュリティ面のリスクを指摘する声もあります。加えて、他のベンダー(サービス提供者)に移行しにくくなるベンダーロックインが発生しがちな点も、リスクの一つです.

メリット

  • 物理的なインフラ管理が不要

  • 理論上は無制限に容量拡張可能

  • 場所を問わずアクセス可能

  • 高度な冗長性とバックアップ機能

デメリット

  • コストの予測が困難

  • インターネット接続に依存

  • データ主権やコンプライアンスに関する懸念

  • ベンダーロックインのリスク

デジタルアーカイブをクラウド移行するポイント

近年ではクラウド技術の進歩に伴い、多くの企業がデジタルアーカイブをクラウドストレージへと移行しています。しかし、クラウド移行を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。

データ移行計画の策定

  • データの規模と優先順位を明確にする

  • 段階的な移行タイムラインを設計する

  • 移行中のビジネス継続性を確保する方法を検討する

コスト構造の理解

  • アクセス料金やダウンロード料金(下り転送料金)の有無や仕組みを把握する

  • 月間の使用量予測とそれに伴うコスト見積もりを行う

  • 長期保存におけるトータルコストを試算する

セキュリティとコンプライアンスの確保

  • 保存データの暗号化レベルを確認する

  • アクセス権限の管理と監査機能を検証する

  • 業界固有の規制要件への対応状況を確認する

アクセスと検索のワークフロー最適化

  • 日常業務におけるデータ検索・取得のプロセスを設計する

  • 既存システムとの連携方法を検討する

  • 大量データの検索効率と速度を評価する

初期データ移行の実行計画

  • 大規模データの初期アップロードに必要な帯域とリソースを確保する

  • データ整合性の検証プロセスを確立する

  • 移行後のデータ検証と旧システムからの切り替え計画を立てる

これらのポイントを事前に十分検討することで、デジタルアーカイブのクラウド移行をスムーズに進め、長期的に効果的なデータ管理体制を構築することができます。

まとめ

ビジネスデータのデジタルアーカイブにおいては、データの永続性と安全性、アクセシビリティと検索効率のバランスが重要です。この点でクラウドストレージのメリットは注目に値しますが、クラウド移行を検討する際は、この記事で紹介したポイントをしっかりと吟味しましょう。

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