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クラウドアーカイブとは?仕組みと導入のメリット、選び方を解説
映像制作、医療、研究開発など、大容量データを安全に長期間保存するニーズは年々高まっています。従来のテープ保存では手間やコスト、検索性に課題がありました。そこで注目されているのが「クラウドアーカイブ」です。本記事ではクラウドアーカイブの基本的な仕組みから従来のテープ保管との違い、導入メリット、そしてコストやセキュリティに関する選定ポイントまで、わかりやすく解説します。
クラウドアーカイブとは?
クラウドアーカイブとは、クラウド環境を活用してデータを長期間保存できるストレージサービスです。
頻繁にアクセスしない「コールドデータ」や、法規制やコンプライアンスの観点から長期保管が必要な「アーカイブデータ」を対象に設計されていることから、大容量で、長期保存が求められるデータの管理などに幅広く使われています。
クラウドアーカイブとテープ(LTO)アーカイブの違い
長期保存といえば、従来は「LTOテープ」が主流でした。しかしクラウドアーカイブは運用面や利便性で大きく異なります。ここでは、主な4つの視点から比較します。
コスト(初期費用・運用費用)
テープアーカイブでは、LTOドライブやテープメディアの購入という初期投資が必要です。さらに、温湿度管理された保管庫の維持費、オフサイト保管のための輸送費、テープの入れ替えや管理を行う人件費など、目に見えにくいコストも多く発生します。加えて、テープの世代交代時には、新しいドライブへの買い替えや、データ移行作業に伴うコストがかかります。
一方、クラウドアーカイブは主に従量課金制を採用しており、初期費用を大幅に抑えることができます。ハードウェアのメンテナンスや故障対応、定期的なリプレースが不要なため、運用にかかる人的リソースを削減できます。
アクセス性・検索性
テープアーカイブの大きな課題は、データへのアクセスに時間がかかることです。必要なテープを保管場所から取り出し、ドライブにセットしてデータを読み込むまでに、数時間から数日かかることもあります。特に外部倉庫に保管している場合は、物理的な搬送時間が加わるため、緊急時の対応は困難です。
クラウドアーカイブなら、インターネットに接続できれば、いつでもどこからでもデータにアクセスできます。メタデータによる高度な検索機能も利用でき、大量のアーカイブデータから必要な情報を素早く見つけ出すことが可能です。
拡張性・柔軟性
テープアーカイブでは、データ量の増加に伴って新しいテープメディアを購入し、保管スペースを確保する必要があります。予想以上にデータが増えた場合、追加の保管庫やドライブの調達に時間がかかることも少なくありません。逆にデータ量が減少した場合は、購入したハードウェアは無駄になってしまいます。
これに対し、クラウドアーカイブは事実上無制限の拡張性を持っています。データ量の増減に応じて自動的にストレージ容量が調整されるため、急激なデータ増加にも即座に対応可能です。季節変動があるビジネスや、プロジェクトベースでデータ量が変化する企業にとって、この柔軟性は大きなメリットとなります。
セキュリティ・耐久性
テープメディアは物理的な劣化が避けられません。一般的な寿命は10~30年とされていますが、保管環境によってはそれより早く劣化することも少なくありません。また、紛失や盗難のリスク、火災や水害などの災害時には、バックアップテープも同時に失われる可能性があります。
一方、クラウドアーカイブは、エンタープライズグレードのデータセンターで厳重に管理されます。データは暗号化によって不正アクセスから保護されるうえ、複数のデータセンターにデータが自動的に複製されることで、極めて高い可用性と耐久性が実現されます。
クラウドアーカイブ導入で得られる5つのメリット
クラウドアーカイブを導入することで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。ここでは、特に重要な5つのメリットについて解説します。
運用コストと管理負担を大幅に削減
クラウドアーカイブ最大のメリットは、TCO(総所有コスト)の削減です。ハードウェアの購入費用、保守費用、電力費、冷却費、床面積コストなどが不要で、テープの入れ替えや在庫管理、定期的な読み取りテストなどの作業も不要となるため、IT部門の負担を大幅に軽減できます。
災害や障害に強いBCP対策の実現
データを地理的に離れた複数のデータセンターに分散保存することで、強固なBCP対策の実現が可能です。仮に本社が地震や洪水などの災害に遭遇しても、クラウド上のデータは安全に守られます。データセンター自体も災害対策が徹底されているため、ビジネスへの影響も最小限に抑えられます。
堅牢なセキュリティによるデータの保護
クラウドアーカイブでは、高度な暗号化技術によってデータが保護されます。きめ細かなアクセス制御や改ざん防止機能により、権限を持たない人によるデータアクセスやデータの改ざんを防ぐことができます。また、アクセスログの自動記録により、誰がいつデータにアクセスしたかを追跡することも可能です。
必要な時にすぐデータを取り出せる
クラウドアーカイブでは、過去の顧客データを分析してマーケティング戦略を立案したり、過去のプロジェクトデータから知見を得たりすることが容易です。アーカイブデータをAIやビッグデータ分析ツールと連携させ、新たなビジネスチャンスを見つけるなど、自社の競争力強化にもつながります。
データ量に応じた柔軟な拡張性
クラウドアーカイブなら、将来のデータ増加を心配する必要がありません。必要に応じて自動的にストレージ容量が拡張されるため、ビジネスの成長に応じた柔軟な運用が可能です。また、M&Aや新規事業の立ち上げなど、急激なデータ増加にも即座に対応できます。
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失敗しないクラウドアーカイブサービスの選び方
クラウドアーカイブサービスは多数存在しますが、選び方を間違えると、予想外のコストやトラブルが発生することがあります。ここでは、サービス選定時の重要なチェックポイントを解説します。
Egress(データ転送)料金を確認する
多くのクラウドサービスでは、データのアップロード(Ingress)は無料ですが、ダウンロード(Egress)時に料金が発生します。この「隠れコスト」を見落とすと、データを取り出すたびに高額な料金が発生し、思った以上にコストがかかる場合があります。
また、APIリクエストごとに課金されるサービスもあり、頻繁なメタデータ検索が必要な用途では大きな負担となる場合があります。サービス選定時は、ストレージ料金だけでなく、データ転送料金やAPIリクエスト料金を含めた総コストで比較検討することが重要です。
セキュリティとコンプライアンス要件を確認する
データの暗号化方式(保存時・転送時)、暗号化キーの管理方法、データセンターの物理的セキュリティレベルを確認しましょう。
ISO 27001、SOC 2、HIPAAなどの第三者認証を取得しているかも重要な判断材料です。金融業界や医療業界など、厳格な規制要件がある業界では、データの不変性機能や、データの保存場所を特定の地域に限定できる機能も必要になります。監査ログの取得機能やデータ削除証明書の発行など、コンプライアンス対応に必要な機能が揃っているかどうかも確認しましょう。
パフォーマンスと既存システムとの互換性を確認する
アーカイブデータとはいえ、必要な際にスムーズにアクセスできることは重要です。データの取り出しにかかる時間(RTO:目標復旧時間)を確認し、自社の要件に合っているか確認しましょう。
アップロード/ダウンロード速度、同時接続数の制限、現在使用しているバックアップソフトやアプリケーションとの互換性などについても確認が必要です。S3互換APIを提供するサービスを選べば、既存のツールやスクリプトをそのまま使うことができ、移行コストも最小限に抑えられます。
まとめ
クラウドアーカイブは、増え続けるデータの長期保存という課題に対する効果的なソリューションです。従来のテープアーカイブと比較して、コストの削減やアクセス性の向上、柔軟な拡張性、強固なセキュリティなど、さまざまなメリットがあります。ただし、サービス選定時には、Egress料金などの隠れコストや、セキュリティ・コンプライアンス要件、既存システムとの互換性を慎重に確認することが重要です。
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