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BCPの必要性とは?中小企業にとってのメリットと課題、支援制度を紹介
近年「BCP(事業継続計画)」という言葉を耳にする機会が増えました。BCP策定の取り組みは大企業を中心に進んでいますが、中小企業ではいまだ十分に浸透しているとは言えません。しかし経営資源に限りのある中小企業にこそ、BCPは必須の取り組みです。
この記事では中小企業がBCPに取り組むべき理由、具体的なメリット・デメリット、そして国や東京都が提供する支援策について詳しく解説します。BCPは決して難しいものではありません。まずは自社が抱えるリスクを知り、できることから対策を始めていきましょう。
「BCP」とは?
BCPとはBusiness Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。企業が自然災害などの予期せぬ緊急事態に遭遇した際に、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続や早期復旧を可能とするために、事前に策定しておく計画のことです。
BCPの目的は、事業の継続を通じて顧客や取引先からの信頼を維持し、従業員の雇用を守り、企業価値を保全することにあります。よく混同されがちな「防災対策」は、主に人命保護や建物・設備の被害軽減を目的としていますが、BCPは、事業の継続・早期復旧に焦点を当てている点が大きく異なります。防災対策が「守り」の対策であるのに対し、BCPは「攻め」の経営戦略とも言えるでしょう。
中小企業におけるBCPの必要性
緊急事態はいつ起こるかわかりません。とくに経営基盤が脆弱な中小企業にとって、事業継続を脅かすリスクへの備えは、企業の生死を分ける重要な経営課題です。ここでは中小企業が直面するリスクとBCPの必要性を具体的に見ていきましょう。
災害リスクと中小企業の脆弱性
近年、日本各地で地震、台風、ゲリラ豪雨、大雪などの自然災害が頻発しています。加えて、新型感染症のパンデミック、テロ、サイバー攻撃などの脅威にも注意が必要です。
中小企業は大企業に比べて経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)が限られるため、ひとたび災害や緊急事態が発生すると、事業継続が困難になるリスクが非常に高くなります。
BCPがない場合のリスク
BCPを策定していない場合、緊急事態が発生した際に企業は以下のような深刻なリスクに直面する可能性があります。
事業停止・縮小による経済的損失:事業活動が長期間停止することで売上が大幅に減少する
顧客や取引先の信頼失墜:納期遅延や提供停止などにより顧客や取引先からの信頼を失い、取引が打ち切られる可能性がある
従業員の離職、採用難:事業の先行きが見えない状況下で従業員の士気が低下し、離職につながる可能性がある。企業の評判も悪化し、新たな人材の確保が困難になる
廃業・倒産のリスク:資金繰りが悪化して事業の再建が困難になり、廃業・倒産に追い込まれる可能性がある
社会的信用の失墜:事業を止めることで地域社会での責任を果たせなくなり、社会からの信用を失ってしまう
これらのリスクは企業の存続を脅かすだけでなく、地域経済全体にも大きな影響を与えかねません。
中小企業がBCPを策定するメリット
BCPは緊急事態発生時のリスクを軽減するだけでなく、平時における経営改善や企業価値向上にもつながる非常に有効なツールです。ここではBCP策定によって得られる具体的なメリットを見ていきましょう。
事業継続性の向上
BCPを策定する最大のメリットは、緊急事態発生時においても、事業の継続、または早期復旧の可能性を高められる点です。BCPには、以下のような具体的な効果があります。
事業継続・早期復旧:事前に対応策を定めておくことで冷静かつ迅速に行動でき、事業の中断期間を最小限に抑えられる
顧客・取引先の信頼維持・向上:事業を継続することで顧客や取引先からの信頼を維持できる。納期遅延やサービス停止による損害賠償リスクも軽減できる
従業員の安心・安全確保:安否確認や避難誘導など安全確保に関する対策により、従業員とその家族の安全を守れる
経営改善・企業価値向上
CP策定は、緊急時への備えだけでなく、平時の経営改善や企業価値向上にも貢献します。
業務効率化・無駄の削減:BCP策定の過程で自社の業務プロセスを詳細に見直すことで、ボトルネックとなっている業務や無駄な作業が明らかになり、改善のきっかけとなる
リスク管理体制の強化:さまざまなリスクを想定し対応策を検討することで、組織全体のリスク管理意識が高まり、経営の安定化につながる
社会的責任(CSR)の遂行:BCPを策定・運用することで社会からの信頼が高まり、企業イメージの向上にもつながる
金融機関・投資家からの評価向上:近年ではBCPの策定状況を評価項目に加える金融機関や投資家が増えており、資金調達や企業評価の面でも有利に働く可能性がある
BCP策定の課題
BCPの重要性は理解していても、実際に策定するとなるといくつかの課題を感じる中小企業も少なくありません。主な課題としては、以下のような点が挙げられます。
時間と手間:BCP策定には、現状分析、リスク評価、対策の検討、計画書の作成など多くの時間と手間がかかるため、日常業務に追われる中でBCP策定に十分な時間を割くのが難しい
専門知識:BCP策定には、防災、リスクマネジメント、事業継続に関する専門知識が必要なため、自社内に専門知識を持つ人材がいない場合、どのように進めればよいかわからない
費用:BCP策定にコンサルタントを活用したり、システムを導入したりする場合、費用の発生が課題となる
こうした課題は、以下で紹介する国や自治体の支援策を活用することで補うことができます。まずは簡易的なBCPからスタートして、徐々に内容を充実させていけば企業の負担を減らすこともできるでしょう。
国や自治体の中小企業向けBCP策定支援
国や自治体では、中小企業のBCP策定を後押しするためのさまざまな支援策を用意しています。これらの支援策を積極的に活用することでBCP策定のハードルを下げることができるでしょう。
国の支援策
国はBCP策定のためのガイドラインやBCPの運営方法など、さまざまな情報発信を行っています。また経済産業大臣が認定する「事業継続力強化計画認定制度」を活用すれば、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援策を受けることも可能です。
参照:事業継続ガイドライン|内閣府、中小企業BCP策定運用指針|中小企業庁、事業継続力強化計画|中小企業庁
東京都の支援策
BCPの策定支援は自治体レベルでも行われています。たとえば東京都中小企業振興公社では、セミナーや講座の開催、コンサルティングの実施による「BCP策定支援」や、必要な経費の一部を助成する「BCP実践促進助成金」などの制度を実施しています。
まとめと今後の展望
自然災害や感染症、さらにはサイバー攻撃といった多様なリスクが企業を取り巻く現代において、BCPは中小企業の存続と成長に欠かせない戦略です。BCPの策定は、緊急時の迅速な事業継続・早期復旧のみならず、平時の業務効率化やリスク管理体制の強化、ひいては企業価値の向上にも直結します。国や自治体が提供する支援策を賢く活用して、今こそ具体的なBCP策定に踏み出しましょう。
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