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レプリケーションとバックアップの違いとは?ビジネスにおけるデータ保護の選択肢を理解する

2024 September 19By Mayuko Yoshitome

現代社会において、顧客情報、売上データ、製品設計といった企業活動を支えるデータは、まさに「企業の財産」です。しかし災害やヒューマンエラー、サイバー攻撃などにより、データ損失のリスクは常に隣り合わせにあります。万が一データが消失してしまったら、事業の継続はもちろん、企業の存続さえ危ぶまれる事態になりかねません。

そこで重要となるのが、データ保護の観点です。この記事では、データ保護の選択肢として重要な「レプリケーション」と「バックアップ」の違いを解説し、企業にとって最適なデータ保護戦略について考えていきます。

レプリケーションとは?仕組みとメリット・デメリット

レプリケーションとは、簡単に言えば「データの複製を作成する技術」。元のデータがあるストレージとは別に、別の場所にもう一つコピーを作成することで、データを常に最新の状態に保ちます。

レプリケーションの種類

レプリケーションには、データの複製方向に着目した「一方向レプリケーション」と「双方向レプリケーション」、データの同期方法に着目した「同期レプリケーション」と「非同期レプリケーション」など、いくつかの種類があります。

  • 一方向レプリケーションと双方向レプリケーション

一方向レプリケーションとは、データを一方的に複製元から複製先にコピーするタイプのレプリケーションです。複製先でのデータ編集はできませんが、シンプルなため高速で処理を行えます。

これに対し双方向レプリケーションでは複製元と複製先の両方でデータを編集でき、変更内容は相互に反映されます。リアルタイムでのデータ共有に適していますが、競合が発生する可能性もあります。

  • 同期レプリケーションと非同期レプリケーション

同期レプリケーションでは、データの複製が完了してから次の処理に移ります。データの整合性が保たれる一方で、処理速度は遅めです。

一方、非同期レプリケーションはデータの複製をバックグラウンドで行うことで、処理速度を優先します。複製元と複製先のデータに時間差が生じる可能性がありますが、システムへの負荷が低く、処理速度が高速です。

レプリケーションの特徴

レプリケーションの3つの特徴を紹介します。

  • データをリアルタイムで複製

同期レプリケーションの場合、リアルタイムでデータの複製を作成します。つまり、元のデータに変更が発生した場合、ほぼ同時に複製データにも同じ変更が反映されるということです。このため常に最新のデータにアクセスでき、業務効率の向上に繋がります。

  • システムの可用性を向上

万が一、元のデータが保存されているストレージに障害が発生した場合でも、レプリケーションがあれば、複製データを使って業務を継続することができます。システムのダウンタイムを最小限に抑えることができるため、事業継続性の向上に大きく貢献します。

  • 災害復旧対策としても有効

レプリケーションでは、地理的に離れた場所に複製データを作成することも可能です。そのため、地震や洪水などの広範囲災害が発生した場合でも、データの損失を防ぎ、迅速にシステムを復旧できます。なお多くのクラウドプロバイダでは、異なるエリア間でデータをレプリケートするリージョン間レプリケーションが利用可能です。

レプリケーションのメリット・デメリット

レプリケーションの最大のメリットは、データ損失のリスクを大幅に低減できることです。リアルタイムで複製が作成されるため、元のデータが消失した場合でも、複製データから復元することが可能です。

一方、レプリケーションでは元のデータとは別に複製データ用のストレージが必要となります。そのため、ストレージ容量の増加に伴い、コストも増加する可能性があります。

バックアップとは?種類とメリット・デメリット

バックアップとは、特定の時点におけるデータのコピーを作成し、別の場所に保管しておくことです。万が一、元のデータが消失した場合でも、バックアップデータから復元することができます。

バックアップの種類

バックアップには、主に以下の3つの種類があります。

  • フルバックアップ

すべてのデータをバックアップします。最も容量が必要ですが、復元が容易というメリットがあります。

  • 差分バックアップ

前回のバックアップ(フルバックアップまたは差分バックアップ)以降に変更されたデータのみをバックアップします。フルバックアップよりも容量を抑えられます。

  • 増分バックアップ

前回のバックアップ(フルバックアップ、差分バックアップ、または増分バックアップ)以降に変更されたデータのみをバックアップします。差分バックアップよりもさらに容量を抑えられます。

バックアップの特徴

バックアップは、特定の時点におけるデータの「スナップショット」を保存します。たとえば、毎日夜中の1時にバックアップを取得するように設定した場合、毎日夜中の1時のデータがバックアップとして保存されます。

バックアップのメリット・デメリット

バックアップは、複数の時点のデータを取得しておくことが可能です。そのため、過去の任意の時点にデータを復元することができます。誤ってデータを削除してしまった場合でも、削除前の状態に復元できる点が大きなメリットといえるでしょう。

一方、バックアップデータから元のデータを復元するには「リストア」という作業が必要になります。バックアップデータの容量が大きい場合、このリストアに時間がかかることがあります。また、バックアップを取得してからデータが更新されている場合、その間のデータは失われてしまう点もデメリットです。

レプリケーションとバックアップ、目的で使い分けよう

これまで見てきたように、レプリケーションとバックアップは、どちらも重要なデータ保護の手段ですが、それぞれ異なる特徴があります。そのため、目的や状況に合わせて使い分けることが重要です。

レプリケーションは「事業継続性の確保」に有効

レプリケーションは、データの複製をリアルタイムで作成し、常に最新の状態に保ちます。このためシステムのダウンタイムを最小限に抑え、事業継続性を確保することに有効です。

常にシステムが稼働している必要があるビジネス(たとえばECサイト)では、システム障害が発生してもサービス停止を回避でき、顧客に迷惑をかけるリスクを減らせます。

バックアップは「データの保護と復旧」に有利

バックアップは、過去の任意の時点のデータを復元できるため、データの消失や破損からの復旧に有利です。定期的にバックアップを取得しておくことで、ヒューマンエラーやシステム障害、サイバー攻撃など、さまざまな原因によるデータ損失に備えることができます。

たとえば、顧客情報や財務データなど、重要なデータの保護には、バックアップが不可欠です。定期的にバックアップを取得し、安全な場所に保管しておくことで、万が一データが消失した場合でも、迅速に復旧することができます

組み合わせることでより強固な保護体制を

レプリケーションとバックアップは、それぞれ異なる目的や用途に適した技術です。そのため、両者を組み合わせることで、より強固なデータ保護体制を構築することができます。

たとえば、主要なシステムにはレプリケーションを導入して事業継続性を確保し、重要なデータについてはバックアップを定期的に取得してデータ損失に備えるという方法が考えられます。

まとめ

この記事では、ビジネスにおけるデータ保護の重要性を踏まえ、レプリケーションとバックアップの違いについて解説しました。

レプリケーションはリアルタイムなデータ複製によって、システムの継続的な稼働を支え、事業停止のリスクを最小限に抑えるための有効な手段です。一方、バックアップは過去のデータ状態を保持することで、障害発生時のデータ復旧を可能にする役割を担います。どちらの技術も、企業にとって重要なデータ保護の選択肢といえるでしょう。

自社のビジネス要件やデータの重要度、予算などを考慮し、レプリケーションとバックアップの使い分け、あるいは組み合わせによって、より強固なデータ保護体制を構築していきましょう。

drp
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