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ランサムウェアに備えるBCP|事業を止めない復旧戦略とは?
ランサムウェア被害は企業に甚大な損害を与える可能性があります。本記事では、BCP(事業継続計画)の観点からランサムウェア対策を解説。クラウドバックアップやデータリプリケーションを活用した被害最小化策、復旧時間短縮のポイント、導入手順までをわかりやすく整理。企業が安全かつ効率的に事業継続を実現するための実務的ガイドです。
ランサムウェアの脅威とBCPの重要性
ランサムウェアによる攻撃は、巧妙化・悪質化の一途をたどる一方です。近年ではデータを暗号化して身代金を要求するだけでなく、データを窃取し「公開する」と脅す「二重脅迫」や、取引先企業を経由して攻撃が行われる「サプライチェーン攻撃」も増加しています。
その結果、製造業の工場が生産停止に追い込まれたり、医療機関のシステムがダウンして診療が混乱したりするなど、事業の根幹を揺るがす被害が後を絶ちません。もはや従来の境界型防御(ファイアウォールやアンチウイルス)だけでは、巧妙化する攻撃を完全に防ぐことは困難です。
そこで重要になるのが、「攻撃されること」を前提とした事業継続の仕組みです。BCP(事業継続計画)の視点から、被害を最小限に抑え、迅速な復旧を実現する体制を整備することが、現代企業にとって不可欠な経営戦略となっています。
BCPにおけるランサムウェア対策の目標設定
ランサムウェア対策をBCPに組み込むには、どのシステムをどのレベルで復旧させるか、具体的な目標を設定する必要があります。その際に不可欠な指標が「RTO」と「RPO」です。
RTO(目標復旧時間):システムが停止してから、どれくらいの時間で復旧させるかという目標値
RPO(目標復旧時点):障害発生時に、どの時点のデータまで遡って復旧できれば事業を継続できるかという目標値
例えば、基幹システムのRTOを24時間、RPOを1時間と設定した場合、1日以内に1時間前の状態まで復旧できる体制が必要です。
RTO/RPOは業務の重要度や企業規模によって異なりますが、適切な目標設定をすることで、限られた予算内で最大の効果を発揮するランサムウェア対策が可能になります。
ランサムウェアによる被害を最小化するデータ保護戦略
ランサムウェアの被害を最小限に抑えるには、攻撃を受けてもデータを確実に復旧できる仕組みが不可欠です。ここでは、そのために有効な具体的なデータ保護戦略を3つご紹介します。
「3-2-1ルール」の徹底
データ保護の基本原則「3-2-1ルール」は、3つのデータコピーを作成し、2種類の異なる媒体に保存、1つは物理的に離れた場所(オフサイト)で保管する手法です。ランサムウェアはネットワーク経由でバックアップデータまで暗号化を試みるため、ネットワークから隔離したオフサイトにバックアップを保管することが非常に重要です。
「イミュータブルストレージ」の利用
ランサムウェア対策の切り札として注目されているのが「イミュータブル(不変)ストレージ」です。このストレージに書き込んだデータは、一定の期間中、たとえ管理者であっても変更や削除することができません。バックアップデータをイミュータブルストレージに保管すれば、万が一ランサムウェアに侵入されてもデータの暗号化や改ざんを防ぐことができ、確実な復旧が可能になります。
「データリプリケーション」の活用
バックアップからの復旧に時間がかかる場合を想定し、より短いRTOを実現する手法が「データリプリケーション(データ複製)」です。遠隔地のクラウドストレージなどにリアルタイムでデータを同期しておくことで、メインシステムがダウンしても即座に複製側のシステムに切り替えることができ、事業停止の時間を最小限に抑えることができます。
データ復旧時間を短縮するためのポイント
データ保護の仕組みを整えても、いざという時にスムーズに復旧できなければ十分な効果が得られません。ここでは、データ復旧時間を短縮し、BCPの実効性を高めるためのポイントを解説します。
実効性のある復旧手順を文書化する
緊急時には、誰が、何を、どの順番で行うのかを明確に定めた手順書が不可欠です。システムの復旧手順はもちろん、経営層や従業員、顧客へ連絡する体制や、代替業務の流れなども具体的に文書化しておくことで、混乱せず対応を進めることができます。
クラウドバックアップで復旧時間を短縮
オンプレミス環境での復旧は、代替機器の調達に時間がかかったり、データ転送速度が遅かったりといった課題があります。クラウドバックアップを活用すれば、物理的なインフラ調達が不要で、高速なネットワーク経由で迅速にデータをリストアできるため、RTOの大幅な短縮につながります。
定期的な復旧訓練を実施する
策定したBCPや復旧手順が「絵に描いた餅」にならないよう、定期的な訓練が欠かせません。実際に訓練を行うことで、手順の漏れや問題点が明らかになるためです。訓練によって課題を洗い出し、計画を継続的に改善していくPDCAサイクルを回すことが、BCPの実効性を高めるポイントとなります。
ランサムウェア対策をBCPに組み込む手順
ランサムウェア対策を考慮したBCPは、場当たり的に策定するのではなく、適切な手順を踏むことが重要です。ここでは、BCPを策定・改善するための基本的な4つのステップを紹介します。
リスクアセスメントの実施
自社にどのようなシステムがあり、どのような情報資産を保有しているかを洗い出します。その上で、ランサムウェア感染をはじめとする様々なリスクが事業に与える影響を分析・評価します。
優先システム・データの特定
リスク評価の結果に基づき、事業継続のために優先的に復旧すべきシステムやデータを特定します。この段階で、システムごとに具体的なRTO/RPOを設定することが重要です。
対策の計画立案とテスト
定めたRTO/RPOを達成するために、データ保護戦略や復旧手順などを盛り込んだ具体的な計画を策定します。計画が完成したら、定期的な訓練を通じて実効性をテストします。
運用・改善のPDCAサイクル
BCPは一度策定したら終わり、というものではありません。ビジネス環境の変化や新たな脅威に対応するため、定期的に計画を見直し、訓練を通じて得られた課題を反映させる改善のサイクルを継続的に回し続けます。
まとめ
ランサムウェアの脅威は、もはや他人事ではありません。攻撃されることを前提としたBCPの策定は、すべての企業にとって急務と言えます。特に、バックアップの「3-2-1ルール」の徹底と、データを改ざんから守る「イミュータブルストレージ」の活用は、事業継続の生命線となります。
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