DATA MANAGEMENT
AIに向けたオブジェクトストレージの準備状況:簡易アセスメント
AIはエンタープライズストレージの戦略を大きく変えようとしています。企業が試験運用の段階を越えて、実際の推論や分析へと移行するにつれ、単にデータを保存するだけでなく、AIワークロードをしっかりと支えることができるストレージプラットフォームが必要とされています。
問題は、AIにとって最も価値のあるデータが、多くの場合「最もアクセスしにくいデータ」であるということです。テキストファイル、動画、音声、画像、その他のフォーマットされていないコンテンツといった「非構造化データ」は、企業データの約80%を占めており、AIアプリケーションにとって非常に豊富な入力ソースとなります。しかし多くの企業では、この非構造化データが依然として部門ごとのサイロに閉じ込められており、高速な検索、幅広い再利用、あるいはAI時代のガバナンスを全く想定していないファイルサーバーやNAS環境に置かれています。
オブジェクトストレージは、まさにこうしたミスマッチを解消するために設計されています。非構造化データを複雑なフォルダ階層に埋もれさせるのではなく、豊富なメタデータと一意の識別子を持つ個別の「オブジェクト」として保存します。アクセスは、プロバイダー間の共通言語となっているS3互換APIを通じて行われます。これらを組み合わせることで、AIやアナリティクスが一貫して利用できる形で非構造化データを整理し、保護し、検索するための強力な基盤が完成します。
しかし、オブジェクトストレージを導入しただけでAIへの準備が万全になるわけではありません。AIはシステムの問題点をすぐに浮き彫りにします。一元化されておらず見つけにくいデータ、複数のチームや自動化ジョブが同じデータセットに同時アクセスした際のワークフローの遅延、保護されておらず復旧が困難な重要データ、そしてカスタム修正が必要で途切れてしまう連携機能などです。簡易的な準備状況のチェックを実施することで、AIプロジェクトが頓挫したり、予測不能なクラウドの従量課金によってAIが「イノベーションプログラム」から「予算削減の対象」へと変わってしまう前に、こうした課題を特定できます。
だからこそ、私たちはこのスコアカードを作成しました。お客様のオブジェクトストレージ環境がAIに対応できる状態かどうかを、迅速かつ実践的に評価するためです。質問に答えることで、絶え間ない手戻りやリスクを抱えずにAIプロジェクトを拡張するため、最初に注力すべき具体的な領域が明らかになります。
このスコアカードの使い方
各質問について、現在の状況を最もよく表している選択肢(0点、1点、または2点)を選んでください。
合計点(最大20点)を計算します。
記事の最後にあるスコア帯と推奨される次のステップを参考に、改善の優先順位を決定してください。
テーマ1:AI対応のデータ基盤
1) AIのデータセットはS3互換のオブジェクトストレージに一元化されており、明確で反復可能なアクセス経路が確立されている(ファイル共有やドライブに分散していない)。
0点 - データは分散しており、AIを機能させるために各チームがデータをあちこちにコピーしている。
1点 - 一部のデータは一元化されているが、依然として複数のソースが存在し、手動でのデータ移動が行われている。
2点 - AIに関連するデータの大部分が、一貫したS3互換の場所に、反復可能な取り込みパターンで保存されている。
2) データセットの命名規則やオブジェクト/バケットのメタデータ(タグ)が一貫しており、各チームが適切なデータを確実に見つけ、適切なポリシーを適用できる。
0点 - 命名規則やメタデータが一貫していない、または欠落しており、データを見つけられるかどうかは運次第である。
1点 - いくつかの規則は存在するが、一部のチームやデータソースにしか適用されていない。
2点 - 主要なデータセット全体で標準的な命名規則と必須のメタデータ/タグが適用されており、ガバナンス(所有者、機密性、保持期間)と紐付いている。
3) どのようなデータを含め、更新し、バージョニングするかに関する反復可能なルールを用いて、「AI承認済み」のデータセットをキュレーションし、常に最新の状態に保つことができる。
0点 - 実質的なキュレーションや所有権の管理はなく、各チームは一時的なコピーに依存している。
1点 - 何らかのフィルタリングは存在するが手動であり、すぐに機能しなくなる。
2点 - 明確な含有ルール、データセットの所有者、および更新の頻度が定められており、反復可能な結果(再現性)をサポートするバージョニングが行われている。
テーマ2:利用拡大に伴うスピードと拡張性
4) AIワークフローは、ストレージの再設計を絶えず行うことなく、大量のデータの読み書きができる(同じインターフェースのままTBからPBクラスへスケール可能)。
0点 - ストレージがすぐに制約となり、頻繁な再設計や移行が必要になる。
1点 - 少数のワークロードでは機能するが、拡張するには大幅なチューニングや再設計が必要になる。
2点 - 頻繁な手戻りなしに、標準的なS3パターン(マルチパート、並列処理)を使用して、予測可能な形(容量およびスループット)で拡張できる。
5) 複数のユーザー、ジョブ、またはエージェントが、常にパフォーマンスを監視・調整することなく、同じデータセットに同時アクセスできる。
0点 - 同時アクセスによって遅延やタイムアウトが発生するため、各チームは共有アクセスを避けている。
1点 - 特別なチューニングや回避策を用い、継続的な監視のもとで機能する。
2点 - 同時アクセスが安定しており、常に介入しなくても並列アクセスパターンが機能する。
6) 高価なAIコンピュートリソースがデータ待ち状態にならないよう、ストレージのデータパスを測定し、管理している。
0点 - 測定しておらず、問題は「原因不明の遅延」として表面化する。
1点 - 時々測定するか、特定のプロジェクトでのみ測定している。
2点 - 一貫して測定(レイテンシ、スループット、リクエストパターン)を行い、それを準備状況の重要なKPIとして扱っている。
テーマ3:サイバーレジリエンスと信頼性
7) 重要なAIデータ(学習データセット、埋め込みコーパス、モデルアーティファクト、バックアップ)は、イミュータビリティ(不変性)の制御によって改ざんや削除から保護されている。
0点 - 保護は場当たり的であり、意図しない削除や変更が気づかれないまま起こる可能性がある。
1点 - 一部のデータにイミュータビリティは設定されているが、チームやデータセットによって一貫性がない。
2点 - 重要なバケットに対する標準的なイミュータビリティポリシー(例:オブジェクトロック)が存在し、所有権の明確化と確実な適用が行われている。
8) ストレージ層において、強力な管理者制御とテスト済みのリカバリ計画により、ランサムウェアや内部リスクに耐えることができる。
0点 - 管理者アクセスが単一障害点となっており、リカバリは不確実であるか、テストされていない。
1点 - いくつかの制御(MFA、権限設定)は存在するが、その適用範囲やテストの実施状況にばらつきがある。
2点 - 破壊的な操作に対する強力な制御(MFAに加え、MUAなどの複数名による承認)と、最悪の事態から復旧するための保護された二次コピー(Covert Copyなどの論理的に隔離されたコピー)があり、定期的にテストされている。
テーマ4:適合性、ポータビリティ、コストの予測可能性
9) AIおよびアナリティクスツールは、標準的なS3 APIを介してストレージと統合されている(重いカスタムコネクタやベンダーロックインがない)。
0点 - 統合が困難であり、大量のカスタムコードが必要になる。
1点 - コアツールは機能するが、重大なギャップや不安定な連携が存在する。
2点 - ツールはS3を介してクリーンに統合されており、新しいツールやプロジェクトの導入をスムーズに繰り返すことができる。
10) AIの利用が拡大(データの増加やアクセスの増加)してもストレージコストは予測可能なままであり、財務部門に対して請求額を明確に説明できる。
0点 - コストの予測が困難であり、利用が増えるにつれて予期せぬ高額請求が頻繁に発生する。
1点 - ある程度の予測は可能だが、アクセスパターンが増大するにつれて依然として隠れたコストの落とし穴が存在する。
2点 - コストは想定通りに推移しており、明確なユニットエコノミクスと予期せぬ追加料金の少なさから、容易にモデル化できる。
スコア帯別の評価
合計スコア(20点満点)から、現在の準備状況を確認してください。
0〜7点:パイロット運用レベル(高い摩擦、高いリスク)
AIのデモを実施することは可能ですが、規模を拡大しようとすると課題が露呈します。データの分散、脆弱なガバナンス、不均一なサイバーレジリエンス制御、そして予測できないコストやパフォーマンスの問題が発生します。
8〜14点:本番運用一歩手前レベル(負荷がかかるとボトルネックが表面化)
実際のワークロードを稼働させることはできますが、データが増大すると同時アクセスやパフォーマンスの問題、制御のばらつき、アクセスパターンに伴う予期せぬコストの高騰が引き起こされます。
15〜20点:スケール準備完了レベル(最適化された基盤)
必要な構成要素が揃っています。一元化されたデータ、キュレーションされたデータセット、安定した同時アクセス、実効性のあるサイバーレジリエンス制御、そして予測可能な経済性が確保されています。
推奨される次のステップ
該当するスコア帯のガイダンスを以下から選択してください。これらのアクションは、S3互換クラウドオブジェクトストレージの一般的なベストプラクティスや、Wasabiのセキュリティおよび経済性の強みに沿って記載されています。
0~7点の場合:基盤の構築(統合、ガバナンス、保護)
AIに関連するデータセットを、一貫したS3互換のオブジェクトストレージのランディングゾーンに一元化し、明確なバケットの境界(チーム、プロジェクト、またはデータの機密性ごと)を設定します。
データセットの命名規則を標準化し、基本的なメタデータタグ(所有者、データタイプ、機密性、保持期間)を必須とすることで、検索性とポリシーの適用を改善します。
サイバーレジリエンスのベースラインを確立します。重要なバケットに対してイミュータビリティ(例:オブジェクトロック)を有効にし、導入初日から最小権限のアクセスポリシーを適用します。
特権アカウントのリスクを軽減します。管理者に対する多要素認証(MFA)を強制し、破壊的な操作に対して複数名による承認(例:MUA)を追加することで、単一の認証情報の漏洩が回復不可能なデータの損失につながるのを防ぎます。
最悪の事態からの復旧を計画します。最も重要なバケットに対して保護された二次コピー(例:Covert Copyのような論理的に隔離されたコピー)を追加し、リカバリのランブック(手順書)を文書化します。
コストを財務部門にとって分かりやすいものにします。シンプルなユニットエコノミクスモデル(TB・月あたりのコストと予想されるアクセスパターン)を作成し、早期に予算や使用量のアラートを設定します。
8~14点の場合:運用化と強化(拡張、テスト、監視)
ストレージがAIコンピュートのボトルネックにならないよう、実際のアクセスパターン(並列読み込み、マルチパートアップロード、同時アクセス)を用いて、大規模なパフォーマンスを検証します。
監視を運用ベースに乗せます。リクエストパターン、スループット、レイテンシを追跡し、主要なワークフロー(学習データセットの取得、埋め込み処理の構築、チェックポイントの書き込み)に対する目標SLOを定義します。
重要なデータクラスに対してイミュータビリティと保護されたコピーを標準化し、復旧時間を証明するために、四半期に少なくとも1回のリカバリ訓練を実施します。
データセットのキュレーションとバージョニングを改善し、データ品質の問題や改ざんが発生した後でも、チームが結果を再現し、迅速にロールバックできるようにします。
データ移動に対するガードレールを追加します。データ持ち出し(Egress)や異常なアクティビティに対するアラートを設定し、それらをインシデント対応の手順書と連携させます。
コストの予測可能性をさらに高めます。プロジェクトやチームごとのショーバック(IT費用の可視化)を作成し、月ごとのコスト増加要因(容量の増加とリクエストの強度)をレビューします。
15~20点の場合:拡張に向けた最適化(自動化、テンプレート化、レジリエンスの成熟)
バケット、ポリシー、イミュータビリティ、管理者制御の再利用可能なテンプレートを作成し、新しいプロジェクトが立ち上がる際にデフォルトで適切なガードレールが適用されるようにします。
レジリエンスの体制を拡大します。ビジネスへの影響度に基づいて、重要なデータセットをより強力な保護階層(イミュータビリティ+保護された二次コピー)へと階層化します。
ガバナンスを制度化します。コンプライアンス要件に適合する所有者、更新頻度、保持ポリシーを備えた「AI承認済み」のデータセットカタログを維持します。
エージェントや検索ワークロードによってリクエスト率が増加する中で、同時アクセスやコスト効率のチューニングを継続的に行います。
認証情報の盗難、内部不正、データの削除や暗号化を試みるランサムウェアなど、ストレージ層のシナリオを含めた定期的な机上訓練とリカバリ演習を実施します。
四半期ごとに準備状況をレビューします。このスコアカードを使用して改善状況を追跡し、次に最も投資対効果(ROI)の高い制御やプロセスの変更を特定します。
注:このスコアカードは、方向性を示す準備状況のチェックを目的としています。正式な監査としてではなく、現状把握のための対話を促し、改善の優先順位をつけるために活用してください。
AI時代のオブジェクトストレージ:最新トレンドと主要プレイヤー
ベンダーに依存しない中立的な視点でまとめられたFuturiom社のレポートをダウンロードして、AIがストレージ要件をどう作り変えているか、なぜ非構造化データがAIの主要な入力ソースになりつつあるのか、そしてS3互換のオブジェクトストレージが最新のAIスタックの中でどのような位置づけにあるのかをご確認ください。このレポートには、主要なアプローチや市場プレイヤー、さらにその市場環境においてWasabiがどのような立ち位置にあるかについても明確に記載されています。
このアプローチを採用する場合、標準的なSnowflakeとS3互換機能を用いて、以下のような手順でセットアップを進められます。
外部ステージを使用してストレージをSnowflakeに接続し、メタデータを更新する
ガバナンス要件に応じて外部テーブルでオブジェクトをカタログ化する
Document AIを使用してドキュメントを解析し、抽出されたコンテンツをJSON形式で保存する
解析されたテキストをチャンク単位に分割し、ベクトル対応テーブルに格納する
Cortex Searchを使用してチャンクデータをインデックス化し、ハイブリッド検索を可能にする
SQL、Cortex関数、またはSnowpark APIを介してクエリを実行する
エージェントやアプリケーションと統合し、自然言語によるアクセスやワークフロー連携を実現する
参考として、SQLの例を以下に示します:
CREATE OR REPLACE STAGE docs_stage
URL = 's3compat://<wasabi-bucket-name>/'
ENDPOINT = 's3.<region>.wasabisys.com'
CREDENTIALS = (
AWS_KEY_ID = '<AKIA...>'
AWS_SECRET_KEY = '<SECRET>'
);
ALTER STAGE docs_stage REFRESH;
CREATE OR REPLACE TABLE ai_ingest.raw_docs AS
SELECT PARSE_JSON(
AI_PARSE_DOCUMENT(
'@docs_stage',
relative_path,
OBJECT_CONSTRUCT('mode', 'LAYOUT', 'page_split', TRUE)
)
) AS parsed
FROM DIRECTORY(@docs_stage)
WHERE relative_path ILIKE '%.pdf';
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WasabiとSnowflakeのソリューション概要では、統合アーキテクチャ、主なメリット、運用環境での活用方法についてご確認いただけます。
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